最近はアトピー患者が増えてきている、とよく言われています。実際、2008~2017の9年間で16万人も増えたそう1)。
かくいう私はアトピーでこそありませんが、アトピー性皮膚炎なみの慢性皮膚炎で悩んできた身。幼い頃から皮膚科の世話になってきました。
最近は一番ひどいときに比べたらだいぶ落ち着いてきたものの、染み付いた長年の癖である「掻く」という行為は中々直るものではありません。気がついたら痒くないのに掻いてる。
さて、今まで皮膚炎に悩んできた人は「掻破による悪循環」はよくご存知のことでしょう。
- 掻く
- 皮膚が刺激される
- 痒くなる
の繰り返しで、どんどん悪化していくやつです。
これを止めるには「掻く」のを我慢しなきゃいけないわけですが、今回は「You Are Not Your Brain」という悪習慣を断ち切るための本を読んだので、そこで紹介されている方法を皆さんにもご紹介しようと思います。
前提知識
本題に入る前に、メソッドを理解するための前提知識を少し。
1. あなた ≠ あなたの脳
題名にある通り、「あなた」と「あなたの脳」は別物です。掻いてしまったからって「僕は誘惑に耐えれないダメ人間だ……」なんて思う必要はありません。脳が「掻け、掻け」と身体に命令しているから掻いてしまうのです。「あなた」のせいではありません。全ては「あなたの脳」がいけないのです。
2. 脳は「待て」ができない
私達の脳とて、自己の不利益になることはしたくありません。ということは、脳は「掻くこと」が私達の利益になると思っているのです。でも長期的に見れば違いますよね? しかし、脳は長期的な視点を持つことが苦手。長期的な利益(肌が綺麗で健康的に!)よりも、短期的な報酬(掻いて気持ちいい!)を脳は優先するのです。
3. 習慣は脳を変える
繰り返しの動作である習慣は、それをする度にその行動に関する脳の部位が活性化され、習慣が強くなります。しかも、繰り返している = 自己に利益がある、と脳が思ってしまいさらに習慣が強化されます。これは良い習慣も悪い習慣も同じです。
The Four Step
この本では、「4STEP」という方法が紹介されています(うっ、頭が……)。文字通り4つのステップで悪癖を治していくとのこと。
1. Relabel: レッテル付け
脳の命令にレッテルを貼る。客観的な視点を持ちながら、脳の指令を冷静に分析してそれに名前をつける。そうすることで、脳と自分を切り離すことができる。例えばどうしてもポテチが食べたくなったら、それに「ポテチへの切望」と名前をつける。
2. Reframe: 再検討
ステップ1で脳の命令が分かったので、その認識を捉え直す。その命令は自分が出しているものではなくて、脳が出しているもので、自分とは関係ないと認識するために。例えば「ポテチへの切望」と名前をつけたら、「食べたくてたまらない!」という認識から「これは脳の報酬系が刺激されているだけだ」と捉え直す。
3. Refocus: 集中先を変える
脳の命令が分かりその認識も変えたら、意識の集中先をその命令から別の所に移す。真に自分に利益をもたらす行動を取る。散歩とか、運動とか、楽器を弾いたり吹いたりするとか。15分以上はやったほうがいい。
4. Revalue: 再評価
別のアクティビティに集中して脳の命令を無視することができたら、今までの自分の行動を評価する。不健康な事をしていたのは自分の脳で、本当の私はそうじゃないという事を認識する。
これらの4STEPを使って、掻いてしまう癖も直せるんじゃないか、ってことです。具体的には、
- 「掻痒感」と名前をつける
- 「ヒスタミンが分泌されて、脳のニューロンが刺激されてるだけだ」と捉え直す(メタ認知)
- 筋トレをしたり、ピアノを弾いたりする
- 痒みを引き起こしているのは僕の脳だ、僕は自分を変えられる、と再評価する
こんな感じでしょうか。反芻思考に対処する「AWARE」に似たものを感じるところもありますね(Accept, Watch → Relabel, Reframe / Act, Repeat → Refocus / Expect → Revalue)。
この4STEPは、様々な心理学的メソッド(認知行動療法、マインドフルネス、リアプレイザルなど)を組み合わせて作ったか、似せて作ったものなので、効果はかなりのものと考えられます。
残念ながら翻訳本はまだ出ていないので、興味を持った方は原著で。
注意
これらの療法は処方された薬と併用して行ってください。上で述べたことを行ったことで状態が悪化した場合は、すぐに止めてください。他の療法を既に行っている場合は、医師に相談してから行ってください。